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梅若会定式能
日 時  平成十八年六月十八日(日)午後1時開演
会 場  梅若能楽学院会館

   
能 頼政
シテ 松山 隆雄
   
能 花月
シテ 平井 俊行
◆ 頼政 ◆ 

 ― 運命の前にたじろがぬ
文武に秀でた老武者の最期の有様を悲劇的に描く ―

 京の寺社を拝み廻った憎(ワキ)が奈良へ行く途中、美しい景色の宇治に着いた。来かかった老翁(シテ)に尋ねると翁はこのあたりの名所旧跡を示した上で平等院に案内した。そこには扇型に芝のなくなっている庭があり、源頼政が自害したところだという。今日は命日で、実は自分がその幽霊だといって。翁の姿は消えた(中入)。
 旅僧がここに夜を徹して読経していると、法体の身で甲冑をまとった源三位頼政の亡霊(後シテ)がどっしりと姿を現わす。無念の自害をした執心はまだ浮かばれないのだ。
 治承四年の五月のことである。自分がご謀叛をおすすめしたため、事が破れて高倉宮(後白河天皇第二皇子以仁王)はご殿をお出ましになり、近江の三井寺へ逃げられた。しかし平家の数万騎が逢坂山へよせると聞いて、また音羽山を越え山科の里へと向かい、木幡の関を避けて宇治橋を渡って大和へと急がれた。その間睡眠不足の宮は六度も落馬されている。
 暫く平等院に座を設けられ、宇治橋の橋板をとり外して敵を防いだものだ。橋の下は急流で川波が立っていた。南北の岸に対峙した源平両軍は大いに奮戦したが、平家の田原又太郎忠綱が先陣となり、大声で指揮をとりながら大挙して川を渡ってきたので、源氏軍は退走するよりなかった。亡霊は詳細に語って自害に到るまでの有様を示すのである。